(入試に遅刻した場合って、どうなるんだっけ?)
っと…諦めに近い感情を抱きながら俯いた時、、
「……俺が証言してやる。人助けで遅刻したって言えば、初めから受けさせてもらえるだろ。」
自転車に跨った黒の学ラン姿の青年が現れ、荷台に乗れと目配せをしてきたので…手に持っていた鞄をギュッと胸に抱き、彼の後ろに乗せてもらって試験会場へと向かった。
事情を説明したところで、試験が行われている教室には入れてもらうことは出来なかったものの、別室で受けさせてもらえることになった。
そこで一緒に来た彼とは別々になってしまったので…彼が試験を受けられたのかは不明だった。
一限目の国語に関しては既に試験は開始してしまっているので…残り時間での受験となったのだが、受けさせてもらえるだけ有難いと思い時間ギリギリまで問題を解き続けた。
試験が終わったあと、そのまま職員室に呼ばれ…先程救急で病院へ運ばれた女性の親族から学校に連絡があったと報告を受けた。
私の中学にも高校側から連絡しておく、と言ってもらえたので少し安心したと同時に…共に試験に遅刻した彼の顔が頭に浮かんだ。
「……あの、私と一緒に遅れて来た彼は」
「ああ、彼も別室で君と同じように試験を受けて帰ったよ。自分は、人助けをしていた彼女をただ見てただけだから受けなくていいとか言ってたけど…」
「……え…?」
「君を置いて一人で向かっていれば間に合っただろうに。そうしなかったのは…人助けをして遅れそうになっている君を残して行くことに後ろめたさがあったんだろう。自転車で二人乗り…というのは、、聞かなかったことにするよ」
帰ってゆっくり休んでね、と…これまで対応してくれた男性教諭に労いの声をかけられ、そこでようやく緊張の糸が解れたのだった。