放課後の図書室─…

私、向坂(こうさか) (いと)は同じ学年の成川(なるかわ)くんが来るのを待っていた。理由はただひとつ…彼に告白する為だ。


直接呼び出したり、友達を介して接近したところで相手にされないということはリサーチ済だったので、、


彼の靴箱に”図書室で待っています”という手紙を忍ばせておくという…なんともアナログなスタンスで成川くんを呼び出していた。


なんの根拠もないが、昭和時代から受け継がれてきたこの古いやり方であれば…彼は来てくれるような、そんな気がしたのだ。


高校の図書室、なんて。放課後に訪れる生徒は少ない。いや学校にもよるかもしれないが…ウチの学校には放課後にわざわざ図書室で残って読書を楽しむような生徒は存在しなかった。



なので…この場所を選んだわけなのだが、誰もいない図書室というのは少しばかり気味が悪いので…もうそろそろ成川くんには来ていただきたい所存であります。


緊張でドクドク、っといつもより強く感じる鼓動を落ち着かせるように胸に手を置き深呼吸をしていると…


静まり返っていた図書室に、ガラガラッ…と扉を開く音が大きく響いた。