むかーしむかーし あるところに ひとりの おじいさんが おりました。

 おじいさんは あるひ 『やさしいこころ』を つくりました。

 それが おうさまの めにとまり いちおくえんで かいました。

 いつのまにか 『やさしいこころ』は えらいひとたちが たくさんの おかねで かうように なっていたのです。

 あまり ゆうふくではない ひとたちは うまれつきもっている 『やさしいこころ』を たくさんの おかねで かいとられるようにもなりました。

 しだいに 『やさしいこころ』のかちは あがりました。

 あまり ゆうふくではない ひとたちは 『やさしいこころ』を うしない 『らんぼうなこころ』の もちぬしに おかねもちのひとたちは たかい おかねでかった 『やさしいこころ』の もちぬしと なりました。

 そして ときはすぎ 『やさしいこころ』と 『やさしいこころ』は ぶつかりあい せんそうがおこりはじめました。

 ひとびとのもつ 『やさしい』のかちかんが ずれていったのです。 

 すると だんだん あまり ゆうふくはでない ひとたちたちも ころしあいを はじめました。

 それでも みんなは やさしいので しなないように ゆっくりと ゆっくりと じかんをかけて ゆびを いっぽん いっぽん きりおとしてゆくのです。

 さて、 こんなじょうきょうをみて こまったのは 『やさしいこころ』を つくった おじいさん。
 
 おじいさんは このせかいから 『やさしいこころ』を なくしてしまったのです。

 せかいから 『やさしいこころ』が なくなったことで ひとびとは また あらそい、 ころしあったのです。

 おじいさんは いいました。
「やさしさで ころしあうよりも きょうぼうな ちからで ころしあったほうが まだ ましだと おもったんだけどな」
と。


 それから100ねん おじいさんも おうさまも いなくなり せかいから あらそいも なくなりました。

 おうさまが おさめていた くには どうなってしまったのか いまでは だれも しることは できないのです。

 あれ? むこうから こえが きこえます。 なんていってるのだろう。

「やさしいこころ。やさしいこころはいりませんか」

 へんなの。 だれしも どこかに やさしいこころを もっているのに これいじょう なにが ほしいというのだろう。

 みんなも 『やさしいこころ』は ほしいかな。 もういちど かんがえてみても いいんじゃないかな。
                                                                        
 めでたし めでたし