いつしか耀太の部活が自主練の時は一緒に帰る決まりになった。耀太曰く、自主練は部活じゃないらしい。れっきとした部活だと思うけれど、今の耀太は中学の時のように部活に本気で打ち込んでいないので、まあ、そういうことにしてあげる。


「(さっき、何の話してたんだろ……)」


若松耀太はわたしの彼氏である。イコール、彼氏彼女であれば、さっきの様子を問い詰めることは可能なはずだ。

──もちろん、普通の彼氏彼女であればの話。

「……さっきの子、だれ?」

でも、やっぱり気になる。震える手に勇気を握りしめて訊ねると、耀太の末広二重がわたしを捉えた。

「マネージャー。最近入ったんだよ」

「……そっか、マネージャー、」

そう言われると、納得するしかない。ただ、普通のマネージャーにしては、パーソナルスペースの配分がおかしかったけど、他人よりかなり鈍感な耀太のことだ。気づかないのだろう。

「あいつ、なずのことめっちゃ聞いてくるんだわ。なずの外面に騙されて、憧れてるだけってやつ。憧れる人間違ってるからな?っつっといたわ」

「ねえ、人聞きの悪いこと言うのやめてよね!?」

「ほらな、意外と凶暴」

結構な力を込めて肩パンしてやると、ちっとも痛そうじゃない耀太は陽だまりを閉じ込めたような笑顔を浮かべる。わたしだって、ほらな、ですよ。