《おまたせ》

たった四文字を電波に乗せて送ると、俯いていた耀太が顔を上げる。末広二重の瞳がわたしを捉えると、耀太は周りの子にぺこりと会釈をし、ズカズカと大股でこちらに近寄る。

「いや普通におせえわ」

「(そんなに凄みをきかせることないじゃんか)」

社長か、王様にでもなったつもりか。

しかしここは学校なので、言いたいことを飲み込んでにっこりと笑顔として吐き出す。

「ごめん。ちょっと文化祭のこと話してて」

ほんとうは、声を掛けるタイミングを見失っただけです。でも、耀太は信じてくれたらしく、でこぴんを一発わたしの額にお見舞すると機嫌が良くなったのか、靴箱に向かうのでほっと胸を撫で下ろす。

ついでに女の子たちもいなくなっていたので、ダブルで安心する。額は地味に痛いけど。

「四組ってホームルーム終わるの早いから羨ましい」

「海老セン、光の速さでホームルーム終わらせてくれんだよな。分かってるわ〜」

「来年は担任だといいな」

「御薗になるよう祈っとくわ」

意地の悪い返事は無視をする。わたしよりも準備が毎回はやい耀太はひと足先に待っているので、靴を履き替え隣に並ぶ。わたしを確認した耀太は、踵を返す。

耀太がイケメンの類にいるからか、耀太と一緒にいると周囲の視線が痛い。主に、女子からの視線が。