スマホを片手に靴箱に凭れている茶髪の男は、わたしにひと言メッセージを送り付けた張本人……若松 耀太(わかまつ ようた)だからだ。

色素の薄い肌と、細身の長身。小顔なうえに端正な顔立ちの彼は、特段何かをしているわけではないのに、マネキンのようだと錯覚する。

学校で耀太と普通に会えるのは登下校程度なので、いつもはそれなりに嬉しいのだけど、今日は真逆の感情が押し寄せた。

「若松せんぱぁい、部の方にも出てくださいよ」

なぜなら、耀太の周囲に見覚えのない女の子が群がっているからだ。


「……無理。だるい」

「そんなこと言わずに、耀太先輩がいてくれた方が、盛り上がりが違うんですよ」

「ふーん」

熱意がまるで違う。塩モード突入中の耀太に対し、耀太が学ランの中に着込んだパーカーの紐を触り、もじもじと首を傾げる女子生徒。ハートのエフェクトが見える。

耀太と待ち合わせしたけれど、その子も一緒なのか。

ちなみに、彼らが屯っているのは、わたしのクラスの靴箱である。

うーん……としばらく考え、スマホを取り出した。