「ねえ、菜絆(なずな)!明日の放課後暇?暇だよね?」

わたしたちの空気を変えたのは、クラスメイトの心桃(こもも)だった。とびきり明るい声に申し訳ないのだけど、わたしはその問いかけを、同じトーンで返せそうにない。

「……わかんないけど、なんで?」

「なんていうか、北高の男子と明日、親睦会するんだけどさ?可愛い子集めてって言われちゃって。菜絆が来てくれたら、ちょ〜〜〜助かる!」

「(親睦会って、それ)」

異性間交友会な気がしますけど、そこは突っ込んだ方がいいのかな?

心桃のフットワークの軽さと人当たりの良い明るい性格はすごく好きだ。でも、日中一緒にいる元気は持ち合わせていないし、明日の予定はあるのに教えられないほど、私たちの距離は近いものではない。

えー……、と言葉を溜めていれば、心桃の瞳が青葉を捉える。嫌な予感だ。

「あ!良かったら青葉さんも!どうかな!?」

「えっ!」

……ほらね。

心桃にとっては、一緒にお弁当食べよう!くらいの、軽いニュアンスかもしれない。社交辞令かもしれない。

しかし、冗談が通じない人も居るって気づいた方がいい。

「黒崎」

誰かが心桃を呼んだ。窓際の、陽キャ集団の中から聞こえた気がした。もちろん気の所為ではなく、目が合った、制服を着崩した男子が不敵に微笑む。