「……え、」

どくん、と胸が弾んだ。対面する耀太は、いつもの優しい顔はしていなくて。末広二重の瞳は、友人といる時のような無邪気さも、放課後のやる気のなさも、部活中の獣のような野蛮さもなく。


「観念すると、こっちは手ぇ出したくてたまんねえの」


ずっと一緒に育ってきた幼なじみなのに。


「だから、早くなずが告るか俺がなずに告っていい?」


知らない男の人みたいだと、耀太なのに、そんな変な錯覚に陥る。


「ああ、でも、なずは準備が必要なんだっけ?」


知らない笑顔で嗤う耀太は、そっと手を伸ばした。ぴくんと肩が揺れた。でも、目が逸らせなかった。逸らしたら負けだと、知らないわたしでも、どうしてか理解出来た。


「俺から告白されるの、待ってなよ」


心臓が早鐘を鳴らした。この熱は、わたしを待ってくれないらしい。

思考回路がパニック状態に陥るわたしの耳に顔を寄せた耀太は、低い声でこう囁いた。


「あんまり待たせると、我慢できなくなるかも知んねえけど
文句は受け付けねえからな?」



わたしは、若松耀太という幼なじみの内側を、全然理解していなかったのかも知れない。