「(告るんだろ、って)」

そんなことを言われても、伝えるべき言葉が脳内に点在していて、定まらない。

なし崩しに変化する空気。この教室だけがぴんと緊張感がふくらんでいるのか、壁を挟んだ向こう側では、話し声や楽しそうな足音が聞こえる。

「待って、心の、準備が」

「準備?」

「告白する場所とか、言葉とか、タイミングとか、もうちょっと髪とか顔とか綺麗にして成功率あげるとか、振られても良いようにメンタル鍛えるとか、〜……とにかく、色々あるの!」


必死に言葉たちをかき集めて耀太にぶつけた。それなのに、耀太と来たら、ふっと口元に笑みを浮かべた。


「いまさら必要なくね?」

「あ、ある!必要!」

「じゃあ言うけど俺な?五年くらい準備してるんだわ」

「……五年?」

「なずが言う、準備ってやつ」

耀太の黒曜石のような色に、わたしが映る。口をぽかんと開けて、間抜けな顔をしたわたしが。


「言わねえなら、俺から告るよ」