パッ!と勢いよく上体を起こした。わたしって、こんなに機敏に動けたのね?と自覚できるほど素早い動きは、生まれて初めてかもしれない。

黒曜石みたいな色をした瞳と出会うと、一瞬で神経が繋がる。でも、現実に理解が追いつかない。

だって、悠衣がいた場所に、何故か耀太がいる。しかも、部活中に抜け出してきたらしくジャージ姿だ。

息を吸い込むと、ひゅっと喉が鳴る。

「っ、耀太、なんで!?」

「悠衣に呼ばれて、交代」

椅子に跨る耀太はあっさりと種明かしをした。と同時に、悠衣の策略に嵌ったことに気付かされる。

おそらく、わたしの愚痴に付き合わされるのがめんどくさくなって、押し付けたのだ。

「で、え?悠衣は?」

「知らね。女のとこじゃね」

訂正。彼女至上主義の悠衣はわたし(幼なじみ)よりも、はぐみ(彼女)を取ったのだ。通常運転だった。


「ほら、告るんだろ。早くして」


さらに、先程のことすべて聞かれていたらしく、耀太はわたしを急かす。でも、ぶつくさに言われても、私はくちをはくはくと動かすことしかできない。