「分かってるならさっさと告れよ、だりい」

悠衣の呆れた声が、閉ざされた視界に落っこちる。

小学生の時から耀太のことがずーっと好きだったこと、悠衣は知っているのだ。バレンタインに贈るチョコが、耀太の方が豪華だったから気付かれたのだ。

「悠衣みたいに出来たら、悩んでないよー……」

いたたまれなくなって机の上に突っ伏した。


「なんで簡単に出来ないわけ」

「怖いじゃん」

「……怖い?」

悠衣が体勢を変えたのか、カタンと椅子がずらされた音がした。相変わらず、悠衣がわたしに関心が無いことが理解できるトーンだった。

「……だって、」

だからこそ、わたしの口はいっとう軽くなる。


「だってわたしが耀太に告白したら、恋人ごっこも終わりだし、幼なじみにも戻れないでしょ?耀太は優しいから付き合ってくれているだけであって、本当は嫌がってるのかもしれないじゃん。だって、耀太は見飽きた幼なじみより新鮮味のある女の子と付き合いたいのかもしれないじゃん。別れようって言うきっかけを作れないだけかもじゃん。告白したら、全部壊れちゃうよ」


言いたいこと、全部を机にぶちまけて、最後にため息を落とした。感情のほとんどを占領していた悩みを打ち明けて、ほんのちょっと心が軽くなったその時。


「別れるって、誰が」


悠衣とは別の声が、真上から落っこちた。