「それよりお前何悩んでんの」
悠衣の不埒な考えを読んでいれば、それよりも先に、悠衣はわたしの脳内を見透かす。惚気の時とは全然違う声色だった。
耀太と同じだけ時間を共有してきた、悠衣とわたし。耀太との恋人ごっこも、悠衣は全部知っている。
「あのさ」と口を開けば、悠衣はスマホから視線を離さず「なに」と、机を挟んだ向こう側から、ぶっきらぼうに聞き返した。
悠衣のこの距離感と温度がありがたい。わたし達の適温だと思う。
「耀太、バスケ部じゃんか」
「あー、バスケ部だな」
「マネージャー、いるじゃんか」
「まあ、居るんじゃねえの」
「その子が、告白しようかなって言ってるの聞いて」
「へえ、告白ね」
「私も耀太に、ちゃんと告白すればよかったなって後悔してるの 」
言い終わると情けなくて、両手で顔を覆った。文化祭までに、果たしてわたしは耀太との関係を終われるのか。ああ、意気地無しは足も手も震えてしまう。