物陰から声の方を覗くと、ジャージの女子がふたり、体育館の壁に凭れて喋っていた。黒髪で化粧っ気のないわたしとちがって、二人とも髪色もお洒落で可愛い子だった。

「うん。とりあえず、文化祭一緒に回れるか誘って、その後告白する」

片割れの女の子には見覚えがあった。記憶と現実が重なったその時、ざらついた感情が心臓を撫でた。

「(あの子、たしか昨日……)」

そうだ。靴箱で耀太に話しかけていた子だ。

「無理じゃない?耀太先輩、超絶可愛い彼女いるじゃん」

「だまって見てるだけも、やじゃん」

「そうだけど、無理じゃない?」

「でも、あの二人が一緒にいるのって登校の時くらいで、学校で一緒にいるとこ全然見ないし。彼女、よーた先輩の試合にすら来ないから、仲良くなさそうだし、意外と行けそうじゃん?」

「ああ、確かに仲良いかって言われたら、良くないかも」


耀太先輩、告白、文化祭……。三つのワードが、脳内をぐるぐると回るわたしの耳に、聞きたくない言葉たちが蠢いた。

さっきまで平穏だった心の衛生状態は一気に悪くなって、気付けば脚は教室に向かって動き出していた。