大好きな彼が蝋人形魔人と呼ばれる謎の蝋人形職人に弟子入りしてしまったと風の噂で聞いた本作品のヒロイン、ヒロイン子(仮名)は強い衝撃を受けた。自分に何の相談もなく、そんな大事なことを決めるなんて! とショックを受けるやら腹が立つやらで、もう大騒ぎだ。実際のところ、相談をされるほど親しい間柄ではないけれど、何か一言あってもいいだろう! と本人に一言か二言あるいはもっといっぱい文句を言いたくなる。
 そんなヒロイン子にさらなる悲報が舞い込む。彼が修行に集中するため学校をやめようとまで考えているとの落書きがトイレの壁に書いてあったのだ。居ても立っても居られなくなったヒロイン子は、謎の蝋人形魔人のもとへ出向いた。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 修行するなら学校を卒業してからだっていいんじゃない?」
 蝋人形魔人は不敵に笑った。
「フハハハハハ、修行するなら早い方がいい。やる気があるのなら学業より修行優先だ!」
 恐ろしい蝋人形魔人を前にしてもヒロイン子は自分の意見を曲げない。
「もしも別の道へ進みたくなったら、どうするの? 学校は卒業させてやってよ!」
「蝋人形職人になりたいと彼が言っているのだから、それでいいではないか」
「弟子が出来たからってはしゃぎすぎ! もっと落ち着いて考えてよ!」
 ギャーギャーうるさいヒロイン子に人差し指を突き付け、蝋人形魔人は再び不敵に笑った。
「フハハハハハ、お前も蝋人形職人にしてやろうか?」
 ヒロイン子はブチ切れた。
「なるわけないでしょ、パパのバカ!」
 娘のヒロイン子からこっぴどく怒られた蝋人形魔人は、正式な弟子入りは彼が学校を卒業してからにすると約束し、娘に許してもらった。