帝王さんの背中に向けて返事をしたあと、私は床に落ちたハンカチを拾い上げる。
この汚れ、血かな…?
けっこうな量だけど…。
「帝王さん!どこか怪我を?」
立ち上がって声をかけると、玄関ホールにいたNight Empireの人たちに“なに言ってんだ”みたいな目を向けられてしまった。
そんなおかしなことは言ってないと思うんだけど。
階段の手すりに手を置いて、少しふり返った帝王さんは、気だるげに私を見る。
「なんで?」
「ハンカチが血だらけなので…大丈夫ですか?」
「…俺の血じゃないよ。返り血、拭いただけ」
「え…」