「あ、こんにちは、おかえりなさい」




 笑いながら、ちょこちょことうしろに下がって道を開けると、帝王さんは形のいい唇をゆっくりと開いた。




「なに、してるの?」


「掃除です!私、家事は得意なので、なにかお手伝いできたらと思って。今、掃き掃除が終わって、水拭きをしているところなんです」




 笑顔で、水拭きが終わった目の前のエリアを指さすと、帝王さんは「ふぅん」と床を見て、黒のブーツで指をさした場所を踏む。

 それから、スキニーパンツのポケットに手を入れて、赤い汚れがついたハンカチをひらりと、私の前に落とした。




「それじゃ、これも片付けておいて」




 抑揚(よくよう)の少ない声でそう言うと、帝王さんは奥の階段へ歩いて行く。

 そのうしろを、真面目そうな雰囲気の男の人がついていった。




「あ、はい!」