「そうだよ。あの“人”じゃなくて、あの“お方”ね」


「あ、ごめんなさい」




 さらっと訂正されて、慌てて謝る。

 男の子は、にこっと笑うと、歩きながら説明を続けた。




「で、帝王さまのお(きさき)さまがプリンセス。つまりきみは、女の子として最高級の歓迎を受けたんだよ。うれしいでしょ?」


「えっ、ということは私、帝王(エンペラー)さんの奥さんにされちゃったわけですか!?」




 まだ高校2年生なのに旦那さんができるなんて困るよ!?




「まぁ、名目上はそういうことだね。奥さんとまではいかなくても、(プリンセス)さまは帝王さまの伴侶(はんりょ)として扱われるんだ」


「は、伴侶…!」




 私が、あのイケメン帝王さまの…!?

 スパイをするには、これ以上ない立場かもしれないけど…突然恋人以上の存在ができるなんて。

 “困る”以外の言葉が出てこないけど、ちょっとドキドキもしちゃう。