どうして入りたいかと言えば、愛奈にお願いされたからだけど。
スパイをしに来ましたとは言えないから、暴走族に入りたい人が言いそうなことを口にしてみる。
すると、私の目の前に来た男の子は、「あははっ」とかわいく笑って、私の顔を、上目遣いでのぞきこんできた。
「いいよ、それじゃあ帝王さまのところに行こうか?」
「エンペラーさま…?」
って、誰だろう。
きょとんとする私に、男の子は、にこっと笑ってみせてから、「ついてきて」と背中を向ける。
最初に話した男の人を見ると、頭を下げていて目が合わなかった。
ひとまず、男の子について階段を上り、お城の中を歩いて行くと、すれ違う男の人たちがみんな、男の子に対して頭を下げる。
不良とは思えないほどかわいいし、愛想もいいけど、この子、Night Empireのえらい人みたい。
ふしぎな暴走族だな、と思いながら歩けば、何回か階段を上がった先で、男の子が足を止めた。