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どうやら、神様と言うものは本当にいるらしい。


「わあっ、鈴音の近くだ。嬉しい!」

「うん、私も!」


私の前の席には紬が座ることになった。隣ではないけれど、前後になれるとはずいぶん運がいいみたいだ。


紬が近くにいるなんて、しばらくは楽しくなるに違いない。


そんな浮かれ気分になっていると、不意に左隣からよろしくね、と声が聞こえてきた。反射的に顔を上げると、ある男子の姿が。


ええと、川瀬くん、だったはず。


「よろしくね」


私も微笑んでその言葉に返す。実は男子にいきなり話しかけられて、緊張はしていたのだけれど、それは感じさせない。絶対。


〝完璧〟であると決めた以上は。


「あっ、鈴音、川瀬くんの隣なんだ!」

「え、うん。そうみたいだね」


紬が小声で耳打ちしてきたので、私も小声で返事をする。紬の口角が少しだけ上がっている気がするのは気のせいだろうか。


「知ってる? 川瀬くんって結構人気あるんだよ。それに鈴音ときたら、もう……!」

「ちょ、声が大きいって……。そして変なこと言わないで……」