私は廊下に繋がる戸を開けて、またもや早歩きで廊下を通り抜ける。2ー2という教室の看板が目に入ると同時に、歩く速度を少しゆるめた。


教室の扉を開けると、先ほどの喧騒が戻ってきた。


一人の時間はもう終わったのだと思い知らされて、なんだか名残惜しくなる。毎日そんなことを思っているのではキリがないな、と心の中で自嘲的な笑いをこぼした。


「あ、鈴音(すずね)

(つむぎ)? どうかした?」

「うん。次の時間、席替えやるんでしょ? 鈴音の隣になれたらいいなあって思って!」

「あはは、ありがとう。私もそうだったら嬉しい」


そういえば、席替えやるんだったっけ。すっかり忘れていた。


今は紬と席が離れている。周りに特に仲いい人もいなくて、少し息苦しいような席だった。


そんな中、紬と隣になれたらなんて、私も思う。


紬とは親友と呼べる唯一の友達で、中学生からの仲である。入学式の翌日、出席番号で隣同士だった私に、紬が声をかけてくれたのだ。


「あの、望月 鈴音ちゃんだよね? 私、吉田 紬って言うの! 入学式のときから可愛いなあって思ってて! 友達になって欲しいなあって……」