「円香〜、放課後一緒にテスト勉強しない?」
ある日、友達のゆかりちゃんがそう声をかけてきた。
「うちらさあ、数学苦手じゃん!だから狩屋くん達に教えてもらおうよ。もう話はつけてあるし」
彼女の言う狩屋くんとは、クラスメイトの狩屋柚瑠くんの事だろう。
彼はとても頭が良く、品行方正でクラスの人気者。そんな彼とお近付きになりたいのか、本当に勉強を教えてもらいたいのか。
……おそらく前者だろうけど。
「うーん、確かに数学苦手だけど…、どうしようかなあ」
「えー、円香も一緒に勉強しようよ〜!お願い!」
必死に懇願され、返答に困る。
そりゃ、私だって行きたいけど、椿くんが…。
「もう円香も来るって言っちゃったし、頼むよお」
必死に頼み込んでくる姿に心が揺らぐ。
……別に遊びに行くわけじゃないんだし大丈夫かな?
ほぼ毎日のように椿くんの家に遊びに行ってるけど、別に約束をしている訳では無く、自然な流れで、それが当然のようになったのだ。
でも、たまには他の人と過ごしてみたい。
いつも椿くんばっかりじゃさすがに肩が凝る。
一応、椿くんに連絡入れたら大丈夫だよね…。
でも何だか面倒なことになりそうだから、クラスの人達と勉強することは言わずに、今日は家に遊びに行かないということだけ連絡しておこう。
因みに、このスマホは椿くんに貰った。
何でも、連絡用だとかなんとか。
『俺以外の連絡先絶対いれるなよ』
貰った時のことを思い出して少し身震いする。
あの時の椿くんは目が据わってて怖かった。