「おい、返事をしろ」


「んー、椿くんのことしか考えてないってばー」


そう言うと、椿くんは満足気に笑うから。


私は椿くんの笑った顔が好きだった。
満面の笑みとはいかないものの、普段なかなか笑わない彼の仏頂面が、私によって崩されているのだと思うと嬉しくて。


成人した椿くんはより一層大人びて、色気が日に日に増している気がする。


黒髪で少し長めの前髪を真ん中で分け、両耳には幾つもピアスが付いている。切れ長の目は鋭く、蛇のよう。誰もが見惚れるその容姿は美を留めることを知らない。


身長もこの間椿くんに聞いたら180はあると言っていたし、その高身長で見下ろされたら誰もがビビり散らかして逃げていくと思う。



「学校はどうだ?男と喋ってねぇだろうな」


「……うん」



来た、と思った。


椿くんと会う度に、私が誰と話したかチェックされる。


私はそれが、とてつもなく嫌だった。



「何だ?その間は。何か疚しいことでもあるのか?」


「ない、ないってば!」


この手の話題になると椿くんは鬼の形相でしつこく尋問してくるものだから、私の精神は疲れ果ててしまう。



「……嘘だったら、殺す」



“そして俺も死ぬ”と、冗談には思えないトーンで物騒なことを言ってくるから、必死に否定せざるを得ない。


どうして束縛みたいなことをされるのかわからないけど、椿くんが傷つくのなら私は…、なんて我慢してしまう。


これが、良くないのだろうけど。



椿くんは、私に少し依存しているのだと思う。