再び目を覚ますと、もう夕方だった。
やばい、寝すぎた。
夜眠れなくなってしまう…。
尿意を感じたので立ち上がり、部屋から出る。
傍に立っていた見張りの組員に御手洗に行ってくる旨を伝え、階段を下る。
椿くんの部屋は二階にあり、御手洗は一階にしかない。それが少し不便だ。
組員も沢山いるんだから増設すればいいのに…。まあでも、屋敷に住んでる人は限られてるし必要ないのかな?
泊まる人もいたりいなかったりするし、割とその辺は自由みたいだしね。
用を足し、とぼとぼと部屋に戻ろうとしている最中。縁側に誰か座っていることに気づく。
あれ、あの子…、
何処かで見たことがあるような…?
こんな天使みたいに綺麗な子、忘れるわけ…。
「ーーあっ!」
思い出した。
私が椿くんに地下室みたいな所に閉じ込められた時、少しだけ話した子だ。
あの時より成長した少年は、より一層美しさに磨きがかかっていた。
横顔からでも分かる顔の整いようはもちろん、栗色の髪の毛は少しウェーブがかっており、美しさと可愛らしさが融合している。
ぼーっと見蕩れていたら、私の気配に気づいたのか、少年が立ち上がり、こちらに近寄って来た。
「ーー久しぶりだね、まどかちゃん?」
そして、にこ、と天使のように微笑んだ少年は、あの日と変わらない笑みを浮かべた。