「……それにしてもホントすごいよね、それ」


前触れもなく、じ、と私の首元辺りを凝視してきた巳波くんに、私は何のことかと首を傾げる。


「?、何が凄いの?」


「……まじか。若も苦労するな…」


巳波くんの言っている意味がよくわからず、
頭の中がハテナでいっぱいになる。


そんな私を見兼ねてか、「…キスマーク、見えてるよ」と、私の首元を指差しながらそう言った。


「…えっ?!」


隠したはずのキスマークが見えていたという事実に、一瞬で顔が熱くなる。


恥ずかしすぎる…!
巳波くんに見られるなんて……!


「……なんかいつにも増して濃いね」


「えっ、き、気づいてたの…?!」


“いつにも増して”という聞き捨てならない言葉に、私の羞恥心は限界突破しそうだ。


絶対バレてないと思ってたのに…!!


「…いや、よっぽどの馬鹿じゃない限り気づくでしょ」


「は、恥ずかしい…っ」


巳波くんに気づかれていたということは、他の人にも気づかれている可能性もあるわけで…。


うぅ…っ、考えるだけで恥ずかしさで死にそう……。



「……そんなことしなくても分かってるっつーの」


「え…?」


「何でもないよ」


巳波くんが何を言ったのか声が小さくて聞き取れなかったけど、その様子を見るに別に大したことではなかったようだ。


…それにしても、椿くんからつけられるキスマークの量が尋常じゃなさすぎてもう隠しきれなくなってきている。

薄くなればその上から重ねられるし、ただただ量が増える一方。


目立つところにはつけられてないけど…。
身体中にビッシリと痕があり、自分で見るのも嫌になるほど。


……なんかキスマークで死んだ人もいるらしいし、私そのうち死んだりしないよね?


なんて馬鹿な想像をしてしまうくらい、高校生になってからというもの凄まじい量のキスマークを付けられるようになった。


巳波くんに今まで指摘されたこと無かったから隠せてるものだと思ってたのに…。