ーーー時は流れ。



私は中学3年生、椿くんは20歳になった。




あれから毎日のように椿くんの家に遊びに行くようになり、それを椿くんも当たり前のように受け入れていた。

私は無知で、極道という世界を知らなかったから、怖いとか、嫌だとか、彼の家の事情を知っても思わなかった。


強面の組員達も、顔は怖いけれど、面倒見の良い人が多くてすぐに仲良くなれたし、椿くんのご両親もとても優しかった。



「円香」



そしてあの後知ったのだけれど、私のお母さんと椿くんのお父さんは昔からの友人らしくて。


私を椿くんに紹介したいとお母さんが椿くんのお父さんに話を持ちかけて、わざわざ隣の家に引越ししたのだと言う。


しかも引越しの費用は全部夏目家が負担したらしいし。お金持ちにも程がある。


あー…、椿くんはそれを知ってたからあの時お母さんの話をしたのかな、と今更納得した。



「……円香、」


「ん、何?椿くん」



昔のことを懐かしんでいたから、椿くんに呼ばれていたことに全然気づかなかった。



「俺の呼びかけを無視して考え事か?」



椿くんはそう言って、不機嫌そうな顔で私を見つめてくるけれど。



「んー…、」



心地よい日差しが射し込む縁側で微睡むのが私の夏目家での日課。


椿くんはそれを知っているから、仕事が終わると直ぐに私の元へやって来る。



「……何を考えてる。俺以外の男のことを考えてるんじゃねぇだろうな」





……数年経って、変わったことがある。



椿くんは、私が椿くん以外を優先することを酷く嫌い、異性の話題や、ましてや友人の話題すらも嫌がるようになった。


1度それを組員に相談してみた事があるけど、「じ、自分は何も言えないッス」としか言われず、何の参考にもならなかった。