私に何か出来ることはないかな。
じっ、と巳波くんの様子を伺っていると、
ある事を思いついた。
「あ!じゃあ巳波くんの怪我が治るまで私が身の回りのお世話する!」
名案だとばかりに巳波くんにそう提案すれば、「却下」と即答された。
「ねぇ、馬鹿なの?いや、聞くまでもないお前は馬鹿だ、阿呆だ」
「なっ…、酷い!」
「酷くない。自分のせいだとか一丁前に思う割には同じこと繰り返すよね。馬鹿すぎて俺頭痛くなってきた」
はーっと大きな溜息を吐いた巳波くんに散々言われ、また馬鹿って言われた…とショックを受ける。
確かに私は馬鹿だけど、そこまで言わなくてもいいのに……!
「若の嫉妬深さ舐めてんの?いっつもそれで痛い目見てんの何処の誰か、言ってみなよ」
「…わ、私です……」
「だよね。一応理解してるみたいで良かったよ」
澄ました顔でサラッと毒を吐く巳波くんにはもう慣れっこになってしまった。
……それでも私の気が収まらないんだもん。
馬鹿でもいいから何か償いたい。
「…でも学校でのことなんて椿くんには黙っておけば分からないんじゃないかな?」
「あの人の勘の鋭さは最早人智を超えてんの。頭の回転も早いし、隙がない」
「うっ…、」
長年の経験上否定できない。
椿くんの勘の鋭さは獣並で、少しでも怪しいと思ったら私が吐露するまで尋問を続ける。
あの蛇のような鋭い瞳に睨まれて動じない人なんているのだろうか…。
「それに何処かの誰かさんが上手く誤魔化せるとも思えないし」
「……で、ですよね……」
……もう完敗だ。
巳波くんに太刀打ちできそうにない。
チクチクと嫌味を言われ続け、私の豆腐メンタルはぼろぼろと崩れていく。
だけど、巳波くんの言うことはいつも正しい。
私の為を思って言ってくれているのが伝わってくるし、巳波くんは凄く優しいと思う。
……何はともあれ、椿くんが巳波くんを監視役から外さなくて本当に良かった。
唯一の話し相手兼相談相手が失われるところだった。