「終わったら迎えに来る」
「……うん、行ってきます」
車を降りようとドアに手を伸ばそうとしたら、後ろから伸びてきた手にグイ、と肩を引かれ、身体のバランスを崩してしまう。
すると後頭部を引き寄せられ、椿くんの綺麗な顔がドアップになったかと思えば、ちゅ、と触れるだけのキスをされた。
そしてそれは次第に激しさを増していき、だんだんと抵抗する力も失われていく。
「ンンッ、く、るし…」
「はっ、気持ちいい、だろ?」
「んんっ…、つばき、く…、」
執拗く唇を舐め回された後、漸く解放された。
苦しかった…。
「俺から離れる時はキスしろって言ったはずだけど」
「……っ」
よく恥ずかしげもなくそんな台詞を言えたものだ。運転手もいるのにそんなの自分から出来るわけないし、したくない。
私を後ろから抱き締めてきた椿くんに「それとも、待ってたとか?」と耳元で囁かれたから、ゾゾッと反射的に鳥肌が立った。
「ち、違うから!」
「……逃げるな」
ギューッときつく身体を締め付けられ、身動きが取れずなかなか車から降りられない。
別に逃げようとしてないし学校に行こうとしてるだけなのに…。
椿くんは、猜疑心が強い。
それが凄く面倒だと思ってしまう…。
私は、高校三年生になった。
そして今も椿くんに囚われたままだ。
家は隣同士だと言うのに椿くんの家に住むことを余儀なくされ、家族と会うこともままならない日々。
お母さんは何も言ってこないみたいだし…、
お父さんは臆病者だから頼りにならないし。
私、一生このままの生活なの…?
考えれば考えるほど、不満が募っていく。
今まで何とか耐えてきたけど、そろそろストレスの限界……。
でも……。
シャラ、と首元でネックレスが揺れる。
これは、私にとって“枷”のようなものだ。