「…っ、わ、分かったから。中学卒業したら、ここに住む、から、やめて椿くん…っ」


椿くんの背中に抱き着き、木崎くんの元へ行かないようにギュッと力を込める。


すると、椿くんがくるりと振り向いたと思えば、私をベッドに押し倒した。


「ハハッ、アイツを引き合いに出してアイツの為にお前が条件を飲んだのは気に食わねェが、俺は今、最高に気分が良い」


切れ長の蛇のような瞳を細め、今まで見たことも無いような甘い笑みを浮かべた椿くんは、私の頬をそっと撫でる。


それになんだかゾッとして、思わず顔を背けてしまった。


「…あと少し、だな」


「な、にが、」


「後に分かるよ」


優しく私の髪を撫でてくる椿くんが怖くて仕方がない。優しくされる方が怖いのは何故なんだろうか。


「お前、高校行きたい?」


「…え、」


……なんて答えればいいんだろう。


ここで行きたいなんて言えば、また椿くんが怒り出してしまいそうでなかなか言葉が出てこない。


「行かせてやろうか」


「え…、いいの…?」


やたらと愉しそうな顔をしている椿くんは、一体どんな魂胆があるんだろう。
また何か良くないことを考えていそうで素直に喜べない。


というか、何故進学するしないを椿くんに決められなければいけないのかと思うけど、ここでまた要らぬことを言っても同じことの繰り返しなんだろうな。


「あぁ。ただし、条件があるけどな」


「……、何…?」


「そんなに怯えんな。条件は大まかに3つある。


1つ目は、今までと同じく男と話さないこと。
女ともあんまり話すな。


2つ目は、送り迎え。中学でも送り迎えするけど、これは高校でもだ。授業が終わったら“寄り道”なんかせず真っ直ぐ家に帰れるように迎えに来てやるから安心しろ。



3つ目はーーーー」