じわじわとその手は上に上がってくる。
その触り方のこそばゆさに、ブルリとまた鳥肌が立った。
「ね、ねぇっ…、今、何時なの…?」
私は時間を稼ぐように質問する。
実際気になっていたのもある。椿くんの部屋には時計が見当たらず、カーテンも閉まっているので時間の感覚が全くないのだ。
「あ?くだらねぇ質問して時間稼ぎしようたって無駄だぞ」
「…っ、時間くらい、教えてくれてもいいじゃん…っ!」
「……、22時半だ」
22時半…。
ということは、私が椿くんの家に連れて来られて5時間くらい経ってるってことだよね。狩屋くんの家で最後に確認した時間は18時位だったから。
あれからそんなに時間が経ってたんだ…。
帰りたい…、帰りたいよ。
「お、お母さんが心配してる、と思う…」
「安心しろ。今日は俺の家に泊まると連絡しておいた」
「えっ、な、何で?明日も学校あるのに…」
「お前は何も心配しなくていい。…何時に終わるかわかんねぇしな」
…だから何が…?
私が困惑していれば、もういいか、と言わんばかりにまた唇を塞がれた。
その激しい口付けに気を取られていると、キャミソールを一気に捲し上げられた。
「んーっ、椿くんっ、やだ!!」
「…あぁ、それと」
フッ、と胸の締め付けが緩くなる。
椿くんにブラのホックを外されたのだと分かった。
「…っ、や、」
「これから毎日送り迎えするから」
「……え?」
送り迎え?誰が?なんで?
私は椿くんに言われた言葉が理解出来ず、
軽くパニックになる。
「ど、どういうこと?」
「そのままの意味だ」
「…っ、でもっ、今まで自分で歩いて行ってたんだよ?送り迎えなんて要らないよ!」
「“誰かさん”は簡単に約束を破るからなぁ、信用ねぇんだよ」
続けて椿くんは「目を光らせておかないと直ぐに他の男の所へ行ってしまう」と、憎らしそうに言う。
約束とか、信用とか、そんなの……。
守る義理もないじゃない。
そう言ってしまえれば、
どんなに楽なことか。