「ここに閉じ込められている間、何を考えていた?」
「え…?」
どういうこと…?
「真っ暗で何も無い、こんな部屋に閉じ込められて、そんな中、お前は何を思った?」
椿くんが私を抱き締める。
高級そうなスーツから、気品漂う上品な香りがする。花みたいな…。
「こ、怖かった…」
「それで?」
「椿くん、早く帰ってこないかなって…っ」
私がそう言えば、抱き締める力を強くされた。
あの時は不安で仕方なかったから、椿くんに助けを求めるしかなくて。
でも、椿くんは何でそんなこと聞いてくるんだろう…。
「お前は暗闇の中で俺を想い、俺の名前を呼んだんだろ?」
恍惚な表情を浮かべた椿くんが、私の唇をそっと撫でる。
それがやけに擽ったくて、背筋がゾクゾクした。
「…な、んで、閉じ込めたりしたの…?」
「お前が俺を求めると思ったから」
「え…」
何、その理由。
「俺はいつだってお前を想ってる。でもお前はそうじゃない。そんなのおかしいだろ?」
そう言って恨みがましそうな瞳で私を睨む。
…わざと、だったんだ。
私が起きた時に椿くんが傍にいなかったのは、
閉じ込めて、不安にさせるため。
…私からしたら、おかしいのは椿くんの方だ。
ーーーそして私は、遂に“禁句”を口にしてしまう。