「お姉ちゃん、だあれ?」
その容姿の美しさに思わず見惚れていると、
少年にそう問いかけられた。
「え、えっと…、私は隣の家に住んでる栗原円香って言います…」
じっと純粋無垢な瞳に見つめられるものだから、思わず敬語になってしまう。
「“くりはらまどか”ちゃん?」
「う、うん」
「まどかちゃんはこんなところで何してるの?」
「えっと…、」
なんて答えよう……。
この家の若頭を怒らせて閉じ込められた、なんて正直に言っていいのかな……。
……というか今、チャンスなんじゃないの?
この子に頼んでここから出してもらえば……。
少年が入口を塞いでいるから、部屋から出たくても出れそうにない。
無理矢理通るわけにもいかないし……。
「あの…、私この部屋から出たいの。だから
そこを通してくれないかな…?」
「うーん、どうしようかなあ」
少年は何故かニコニコと笑いながらそう言うだけで、退いてくれようとしない。
「お願い…っ、ここ、怖いの」
「怖くて当たり前だよ。ここは普通の部屋じゃないもん」
「え、それ、どういう…、」
「しっ。足音が聞こえる」
ーーーコツ、コツ、コツ、コツ
「残念だけど、僕、帰らなきゃ。……またね、まどかちゃん」
そして、一体どこから来たのか、私が連れてこられた道とは反対方向に少年は去ってしまった。
あっちって行き止まりじゃなかったっけ…?
私が呆然と立ち尽くしていれば、
少年が去って僅か数秒後に、椿くんは現れた。