ーーー人生で初めてのキスは、血の味がした。



唇全体が椿くんのそれに包まれて、啄むようなキスを繰り返される。


「口、開けろ」


何だか従ったらお終いなような気がして、意地でも開けてやるもんか、と歯を食いしばる。



椿くんはそれに苛立ったのか、私の首にかける力を強めていく。
息苦しくて思わず口を開けてしまえば、ぬるりとした舌が私の口内に入り、中を掻き乱した。


「んっ…、つ、ばきく…」


初めての感覚に息を乱すことしか出来ない。
それはどんどん激しさを増していくと、椿くんは思いっきり私の舌を噛んだ。



「いっ、たっ!」


噛まれた箇所からどんどん血が溢れ、
口内に鉄の味が広がっていく。


何度も唇や舌を噛まれる。
だけど噛まれた後には優しく舐められ、痛みと気持ち良さでもうワケがわからなかった。



「ぃ…たい…、んっ、やめて…、」



「は、やめるわけねぇだろ」


椿くんはそう言って自身の口元に付いた私の血をペロリと舐めた。


「はは、もっと早くこうすれば良かった」


“いいカオしてる”と恍惚な表情を浮かべ、また同じ行為を繰り返しだした椿くん。


苦しいし痛いのに、全くやめてくれなくて。


舌が無くなってしまうんじゃないかと言うほど、血が出ていると思う。


もう、痛みで感覚がない。


どうしてこんなことするの…?


私にはもう何もわからないよ、椿くん。






「お前に嘘を吐かれた時は殺してやろうかと思ったけど、よく考えてみれば、お前はまだ中学生のガキだ」


「……ただお前は、選択肢を間違えただけなんだよな?」



……選択肢?


遠のく意識の中で、椿くんは何を言っているのだろうと思った。





「……お前だけは、死んでも離さない」




ーー気絶した私には椿くんがそう呟いたことなんて、知る由もなかった。