「きゃっ!!」


突然、椿くんに押し倒された。

背中に硬いものが当たったけど、痛くはない。これは、マットレス……?


「お前の罪は何か、自分の口で言ってみろ」


「つ、罪って…、椿くん大袈裟だよ…」


そこまで言われるようなことを私はしただろうか。

友達の家で勉強会をして、何が悪いの?
別に遊ぶ約束をしていた訳でもないんだから、そんなに怒らなくてもいいと思う。


「大袈裟?お前に関することで大袈裟なことなんて、ひとつたりともない」


ぐっと顎を掴まれ、強制的に顔を椿くんの方へ向けさせられる。

椿くんの息遣いが感じられるほど近くに顔を寄せられ、自然と目を逸らしてしまう。


「真っ直ぐ家に帰るとばかり思っていたのに、いつもの時間になってもお前は帰って来ない。

そしてお前の母親にお前が他所に遊びに行ったと知らされて、身が引き裂かれそうになった俺の気持ちがわかるか?なぁ、裏切り者の円香」


「う、裏切り者って…、家に遊びに行かないって言っただけじゃん!それに、遊びに行ったわけじゃなくてテスト勉強をしに行ったんだよ…!」


必死に誤解を解こうとするも、それ以上話すなと言わんばかりの鋭い瞳に睨まれる。


私は何故椿くんがそんなに怒るのか、全く理解出来なかった。


「何をしたかなんてどうでもいい。俺に嘘吐きやがって」


顎を掴んでいたその手は、ゆっくりと私の首へと移動する。


怖い、怖い、怖い。

私はどうすればこの状況から逃れられるんだろう。


「お前がやっと電話に出たと思ったら男の声が聞こえて、気が狂いそうになった」


「……そ、れは、」


木崎くんが、私のスマホを奪い取ったから。


「…俺にはお前しかいない。そしてお前にも俺しかいない」


“なぁ、そうだろ?”と椿くんは私の首に手をかけたまま、



ーーー噛みつくようなキスをした。