首に腕を回され、連れてこられたのは今まで入ったことの無い部屋で。
こんな部屋あったんだ、と目を見張る。
地下室、と言うのだろうか。
そこは一面真っ暗で、何も見えない。
窓もなく、何のための部屋なのか皆目見当もつかない。
「わっ…!」
私が呆けていると急に腕の力を強くされ、身体が締め付けられる。
片方の腕はお腹に回され、まるで蛇にでも巻き付かれているような感覚だった。
「椿くん、痛いっ」
「お前、何でもするって言ったよな」
その言葉に身体がぴくりと反応する。
確かに何でもするとは言ったけど、それは常識の範囲内での話。
それに、ああでも言わないと椿くんは本当に木崎くんを殺しかねないと思ったから…。
私を後ろから抱きかかえている椿くんの顔は見えない。だから、彼が何を考えているのか分からない。
言ってしまったものは仕方ないし、木崎くんを助けるためだから後悔はしていない。
だけど、冷や汗が止まらない。
椿くんのことが、怖くて仕方ない。
「言ったな?」
「…う、ん…」
イエス以外の返答は許さないと言わんばかりの問い掛けに、私はイエスと答えるしかなくて。
恐る恐る振り向き、椿くんの様子を伺えば。
ーーーゾクッ
その歪で狂気を孕んだ笑みに、背筋が凍りつく。
私は一体、何をさせられるんだろう。