「金輪際円香と関わるな。円香を見るな。考えるな」


「……っ、」


理不尽かつ横暴で無理極まりないその“チャンス”に木崎くんはなかなか首を縦にふらない。


もういいから、分かったって言ってよ…。

私のことなんて、無視していいのに…!!


「そうか。殺す」


椿くんが感情の篭っていない声でそう呟き、
大きく腕を振りかぶろうとした、その時。


「私がっ!!!!」


「……あ?」


「私が、何でもするから。だからお願い、やめてよ椿くん…」


ぎゅっと椿くんの背中に抱き着く力を強め、必死に頼み込む。

もう何も関係のない人を巻き込む訳にはいかなかった。


お願い、お願い、やめて。
木崎くんは何も悪くないから。


そんな私の思いが通じたのか、椿くんは振りかぶっていた腕を下ろした。


私はその姿にホッと胸を撫で下ろす。


「………命拾いしたな」


椿くんはまるでゴミを見るような目で木崎くんを見下ろし、


「2度目はねぇぞ」


そう言って私の腕を強引に引っ張ると、狩屋くんの家から連れ出した。