鋭い瞳に睨みつけられ、身体が固まる。
一言でも間違えれば殺されるんじゃないかと思うほど彼は殺気立っている。
「来い」
椿くんは座り込んでいた私の腕を掴み無理矢理立たせると、足早に部屋から連れ出そうとする。
掴まれている腕から怒りが伝わり、どうすれば椿くんの怒りを鎮めることが出来るのか必死に考えてみるけど、一向に答えが出てくれない。
「っ、待てよ…!お前が椿って奴か?!」
すると、慌てて駆けつけた木崎くんが椿くんに詰め寄る。
そんな彼を椿くんは親の仇でも見るような顔で睨みつけ、次の瞬間ーーーー
ーーーガンッ!!
椿くんは目にも留まらぬ速さで木崎くんを壁に押し当て、彼の首を片手で鷲掴みした。
「ぐっ…!!」
「木崎くんっ!!」
首の骨が折れてしまうのでは無いかと言う程、強く締め付けられている。
一瞬のことに何も抵抗出来なかった木崎くんは苦しそうに藻掻く。
私は椿くんを止めるために、背中に抱き着いて引き離そうとするけれど、それはなんの効力も持たなくて。
「……円香の“友達”だって?」
これ以上力を込めれば本当に死んでしまうというのに、椿くんの込める力は増すばかり。
「っ…、椿くん、やめてっ!!」
私の必死の叫びも椿くんには全く届いていない。
斜めから少しだけ見えたその顔は、まるで能面のように感情が感じられなかった。
「昔っから邪魔で邪魔で仕方ねぇ。
円香の口からお前らの名前を聞く度に殺したくなる」
「ぐ、っ…!」
「……、これが最後のチャンスだ」
「…っ!げほ、っ!」
椿くんがそう言った瞬間、掴んでいた手を離した。
木崎くんは急に空気を取り込んだせいで激しく咳き込んでいる。
……私の、せいだ。
私が、椿くんの連絡を無視したから。