さっきから機嫌の良い木崎くんは、執拗に私に絡んでくる。感情の起伏が激しい人だ。
「……お前さあ」
「今度は何?」
さっきからおいだの、なぁだの、思いついたこと全部私に言ってきてるんじゃないのだろうか。しかも全部大したことじゃないし……。
木崎くんは見た目に反して勉強が出来るからいいかもしれないけど、私はそうじゃないんだからやめて欲しい。
「何で中学入ってから、あんま男と喋らなくなったわけ?」
「え…、そうかな?」
探るように見つめられて、戸惑う。
思春期にはよくある事だと思う。
今まで普通に話せていたのに、急に意識しはじめて、緊張したり。
別に私だけではなくて他の子もそうだと思う。
私の場合は、椿くんに言われたから思春期なんて関係ないのだけれど、そういう風に思われているとは思わなかったから少し驚いた。
「そーだろ。前はもっと話してたのに最近は避けてるように見える」
「…でも木崎くんとは元々そんなに話してなかったじゃん。いつも悪口しか言ってこないし!」
「はぁん?!いちいちムカつくやつだなテメェは!」
「ホントのことじゃん!」
「あれはっ…!」
あれは…、何?
言葉の続きを待ってみるも、何も言わなくなった木崎くん。
「ーー……からだよ」
「え…?なんて?」
よく聞こえなくて、聞き返す。
でも木崎くんはもう言うつもりはないのか、返事はなかった。