「はぁん?!俺は本当のこと言ってんだよ…って、柚瑠…?」


急に木崎くんの勢いが止まる。


どうしたんだろう、と私も狩屋くんの方を見てみれば、狩屋くんは凄く蔑んだ目をして木崎くんを見つめていた。


「光…、お前目的忘れてないか?」


「…っ、それは、」


木崎くんが言い淀む。


いつも口調の激しい彼を押し黙らせる狩屋くんはやっぱり凄いなと思った。


私たちはテスト勉強をしに狩屋くんの家に居る。


それなのに無駄に木崎くんが私に絡んでくるから、なかなか勉強が進まないじゃないか。


「まぁまぁ。2人とも落ち着きなよ。あ、狩屋くんここ教えて〜」


ずっとひとり真面目に勉強していたゆかりちゃんが、2人を宥める。


ゆかりちゃんって、周りをよく見れて気遣いの出来る凄くいい子なんだよね…。


だから私はゆかりちゃんのこと好きなんだ。


もっと友達の良いところを知ってほしいのに、椿くんが嫌がるから話もできない。


自慢の友達なのになあ…。



「…おい」



さあ私も勉強するか、とシャーペンを握ると同時に、隣から木崎くんが話しかけてきた。


なんなんだろう…。もう話しかけてこないで欲しいのに…。


何?という意味を込めてじっと木崎くんを見つめれば。


「…返事ぐらいしろよ」


木崎くんにギロッと睨まれた。


さっきゆかりちゃんが上手くフォローしてくれたのに、また同じこと繰り返すつもり?


何で木崎くんは私にだけ悪態をついてくるんだろう…と思いながら、言われた通り「何?」と返事をする。


「お前、そこ間違ってんぞ」


「え?どこ?」


「あー、そこじゃなくて、ここ…」


そこ、と指をさされたところを答えと照らし合わせて見ると、確かに間違っていた。


……何だ、答えを教えようとしてくれてただけか。


普通に有難かったので素直にお礼を言うと、木崎くんは「べ、別に気になっただけだし」と言ってそっぽを向いた。