『秘密』

 幼馴染の三人は、いつものようにこの東屋に集まった。目の前の海には、すでに遊泳禁止の札が立っている。
 自転車を止める音がして、翔と花が振り返ると、孝介が手をこすり合わせ、寒いと言って入ってきた。学ランになったばかり、「一週間前の暑さはあれは嘘だな」と、孝介が言うと、二人が笑った。
 彼らは幼稚園のときから一緒で、ブランコに乗ったのも、海に入ったのも、運動会のリレーの練習をしたのも、三人で夜に抜け出して星を見に行ったのも、いつも一緒だった。
 お調子者の孝介は、正直なところ、元気がない日でも、二人を心配させてはいけないと、無理をしているところもあった。それが自分の役だと思っていたから。
 そして、翔と花の裡には、ずっと昔から、何か共謀している罪の意識に似たものがあった。そして、それが、くべた薪のように、二人の恋心を燃え上がるように大きくさせることも。……
 孝介も花のことがずっと好きだったから、卒業までには、この気持ちを花に告白するつもりでいる。その前に、翔に相談しなければ。……
「見てろ、泳いでくるよ」
 またいつものように、孝介は二人の前でお道化てみせた。