「はい、もともとこのカフェは星好きの祖父がやりたくて建てたんものだったんです」

香月さんはわたしに席にかけるよう手で促した。


再びカウンター越しに向き合い、香月さんの話しに耳を傾ける。


「もともと、ということで察しがついたかもしれませんが、三年前に祖父は亡くなっています。病気で入院してましたが、星だらけのカフェをやるんだ!ってなかなかの頑固っぷりで」

「……そうだったんですね」

「プラネタリウムと同時期に亡くなったので、なんの因果か考えたこともありましたが、祖父のやりたかったことでしたし、なかったことにもできたのですが……」

少し間があいたが、わたしはじっと香月さんの言葉を待った。


「完成間近ってこともあって、ゼロにするのは気が引けましたし、つい祖父に口走ってしまったんです。……じいちゃんが来るまで、俺が先にカフェやるから、って」

「それで今も……」

「結果的に俺が意志を引き継ぐ、ということに」

香月さんは苦笑いして見せるが、なかなかできることじゃない。

「市川さんと同じようにプラネタリウムが好きでしたから、星関連の本や雑貨を片っ端から集めていたんですよ」

「あ、だからこんなに沢山……」

「はい、店内が今のように星だらけになった、という」

相当のマニアだ。

「中には、良い値がつく代物もあるって言ってましたが、オークションやらフリーマーケットで手に入れた物だったりするので、にわかには信じかたいですがね。よくわからないのもありますし」


確かに――素直に綺麗だと思う物もあるけれど、目がキラキラした宇宙人のような置物や、奇妙な星の形のお面が連なったりしてるのは、ちょっとよくわからない。