照明がつけられ、前と同じようにカウンター席に座った。

香月さんは荷物をテーブル席に置いて、わたしとカウンター越しに向き合う。

「先週に引き続き、もう来てくれるとは……本当に気に入って頂けたみたいで嬉しいです」

「はい……とても素敵で、プラネタリウムに行きたかったわたしには凄く癒されます」

「それは良かった」

「でも、いいんですか?本当はお休みだったのに、いれてもらって……」

「思ったより仕事が早く片付いたので、掃除でもしようかと、その足でまっすぐ来たら、市川さんが居た……というわけです」

「仕事?って……?」


カフェだけじゃないってこと?

香月さんは少し視線を外して、頬を掻いた。


「一応……書道家、みたいな……ことをしていて、その打ち合わせでした」

「書道家!?……凄い」

スタイルよし、顔よし、それに字がお上手……天は二物も三物も香月さんに与えていたのか。


ん?もしかして――

「壁に飾ってあるあの書って……」

「俺が書いたものです」

「やっぱり!」

椅子をおりて額縁の前に近付くと、カウンターから香月さんもやって来た。

「わたし、字についてよく分からなくて素人の感想になってしまいますが、綺麗です……葉書とかでしか書道家さんの字を見ることがなくて」

「大丈夫ですよ。ありがとうございます。でも、まじまじと見られるとお恥ずかしいですが……祖父の意向で壁に飾ってるんです」


「お祖父様、ですか」