毎回、動画を投稿する前は相反する感情に苛まれる。

 楽しいからやってるけど、顔出ししてほしいってコメントとか、粘着質なアンチとか、そういったものは怖くていやだ。不安が肥大化してしまう。



「いつもごめんね」



 不安定な情緒が、言葉になって漏れ出た。

 だって、生活能力のないわたしと千佳くんは真逆。料理、洗濯、掃除、なんでもできるパーフェクトヒューマン。比べると歴然だ。

 けど、落ち込んでるわたしの頭を、片手で雑に撫でくりまわした千佳くんは、淡々と告げる。



「何度も言うけどな、俺は好き好んでお前といる。世話焼くのも、ただのエゴ。だから迷惑でもなんでもない。好きにやって、やめたくなったら逃げればいい」

「……」

「お前が望むものは、俺が全部叶えてやる」



 ほんの少し緩んだ、千佳くんの眦。

 溢れ出そうになる〝好き〟を押さえ込みながら、わたしは頷き、代わりに撫でてくれる手に甘えた。



「千佳くんが幼なじみでよかった」

「幼なじみじゃなくても、何も変わんないけどな」

「変わるよ。友達なってくれなそう」

「友達じゃなくてもなれるものはあるだろ」

「えー?あるかな」

「ある」



 あるなら教えてほしいけど。

 妹枠とか言われたら落ち込んじゃうから、これ以上聞けない。

 怖くなったわたしは自己防衛のため、撫でてくれる優しい手から離れた。