わたしが食べてる姿を、千佳くんは頬杖をつきながら見守っている。監視しなくても、喉につまらせたりしないのに、過保護だ。



「編集、進捗は?」

「ぼちぼち……。今回の曲と振り付け気に入ってるから、映像もこだわりたいなって」

「なるほどな。衣装はどうだった」

「今回のテーマが退廃的な美だから、かなりマッチしてた。あとで確認して?」

「ん、わかった」



 もぐ。最後の一欠片を、飲み込んだ。

 幼なじみに頼りきってる哀れな引きこもりにも、手に職は必要。ということで、わたしは趣味も兼ねて正体不明のアーティストとして活動している。

 簡単にいうと、無料の動画配信サイトに投稿して、収益を得ている個人事業主だ。

 人との関わりが苦手なので企業には属さず、顔出しもしないでやっている。だからこそ、編集作業やら諸々の細かいこと、全部ひとりでやらなくてはならない。



「うう〜、不安……」



 今回は、自分で制作した曲を歌うのに加えて、衣装を着て踊ったから、映像を編集するのが大変だった。

 歌うのも、踊るのも、だいすき。

 でも顔は晒したくない。みてほしいけど、注目されたくはない。