自分の声がわかりやすく拗ねていたから、漂う無言の時間が恥ずかしい。仕事だったはずの千佳くんに、我侭で理不尽なこと言った。

 鍛えてる千佳くんの背中に、額をめりこませる勢いで擦り寄せると、ちいさなため息が降りかかる。



「連絡したろ」

「……え?」



 ……連絡、した?

 途端に、脳裏によぎったのは充電していなかったスマホの存在だ。

 千佳くん、冤罪かもしれない。



「一時間おきに、連絡入れてる。無視されたのは俺の方だっつの」

「えっと……」

「どうせ、スマホの充電切れてたとかだろ?パソコンの方は使ってるみたいだったからな。生存確認そこでしてた」

「千佳くんの大当たりです。ごめんなさい」

「反省しろ、チビ助」



 頭のてっぺんを拳でぐりぐりされる。

 失態つづきだ。しゅんと肩を落としてへこむ。いい匂いのホットサンドで少し回復したけど、反省は怠らないようにしないと。



「ありがと、いただきます」

「冷めないうちに食えよ」

「ん、くしゅんっ」

「だから風邪引くって言ったろ。俺の服着とけ」



 テーブルに置かれた、出来たてのホットサンド。

 数時間ぶりにまともなご飯にありついたわたしは、千佳くんサイズの服を着させられ、ゆっくり噛んで食べろよ、という言葉にもぐもぐしながら頷いた。