「のの、眠いならベッド連れてくぞ」
ご機嫌ななめなわたしに気づき、寝るように促してくる千佳くんは、なんでもない顔で服を脱がしてくる。
そうやって、他の女の子にも触ったりするのかな。わたしが下着同然でも、照れてくれたりしないもんね。
「まるくなってんぞ」
「抱っこ」
「歩きたくないわけね。服着ろって」
「このままでいい。ベッドに毛布あるし」
「風邪ひく」
「やだ。このまま抱っこしてベッド連れてって」
頬を膨らませることを〝まるくなる〟と表現する千佳くんは、わたしをいつまでも子供扱いする。
それが今日はとくに嫌で、いっそのこと困らせてやろうと、わたしは下着だけの格好で、千佳くんに抱っこしてのポーズをした。
眉間にしわ寄せて、少し視線を伏せた千佳くんは呆れたように「はー……」と息を吐く。
それから仕方なさそうに、わたしを抱えあげた。
「千佳くんと寝たい」
「同じ寝室でいつも一緒に寝てんだろ」
「くっついて」
「これ以上どうくっつけってんだよ」
混ざり合って、溶けてなくなるくらいが丁度いい。
わたしを抱きかかえた千佳くんは「尻もぞもぞさせんな」と、極力触らないように目線まで逃がして寝室へと歩き出す。
わざと胸を押し付ければ「……冷水浴びたい」と遠い目をした千佳くんに、力なく呟かれた。