6時10分。アラームが鳴る。

 まだ夜中だと思っていたのに、もう朝になってしまったらしい。

 徹夜をしたせいで、無意味になってしまった時計の起床アラームを止める。疲れ眼を手のひらでごしごし擦ると、脳内に出てきた幼なじみが擦るなと怒った。



「あれ? 千佳(ちか)くん、帰ってきてないや」



 無駄に広い家は、しんとしていて人の気配がない。

 それは6つ上の幼なじみが、まだ帰ってきていないことを暗に示していた。

 どうせなら一緒にベッドに入って眠りたい。少し待っていようと、わたしはキッチンに行き、甘いカフェオレをマグに入れて、玄関先でちょこんと体育座り。

 待っていた時間は、おそらく30分ほど。

 家の門のロックが解除される音がして、わたしは玄関のドアを半分だけ開けた。



「……千佳くん、おかえり」

「おい、裸足で出てくるな。風邪ひくだろ。家の中戻れ、すぐ行くから」

「お迎えしようかなって」



 わたしの姿を見つけ、帰ってきて早々に、小言をぶつけてくる過保護な千佳くん。

 でも、あからさまにしょぼんと落ち込むと、呆れた顔で走ってきた千佳くんが、雑に頭を撫でてくれた。



「――ただいま、乃々(のの)



 高い外壁と木々に囲まれた家。

 過保護な幼なじみの要望もあって、常に最新のセキュリティを利用している家は、まるで世界から孤立した箱庭。

 この安心できる箱庭が―――、

 わたし、泗水(しすい) 乃々(のの)と幼なじみである藺月(いづき) 千佳(ちか)の住まいだ。