夢を見た。
それは幼い頃、雫と私が
当時、近所にあった菜の花畑で
指切りげんまんをした記憶。
夢から醒め、うっすらと目を開けば
そこは自分の部屋ではない…
でも見慣れた部屋のカーテンの隙間から
朝の光が少し舞い込んできていた。
若干ダルいながらも
起き上がろうと身体を動かそうとすれば
寝たままの状態で
いわゆる"バックハグ"をされており
身動きが取れない。
「…雫、」
私はバックハグをしている犯人…
雫に顔だけ向け声を掛けた。
「雫、起きて」
私がそう言うと目は閉じているのに
ぎゅうっと私を抱き締める腕に力を込め始め…
「…雫、起きてるでしょ」
私が少し低い声でそう言えば
フッと笑いながらゆっくり目を開き
「バレた?」
といたずらした子供みたいな笑みを浮かべた。
「もう8時だよ。起きなくちゃ」
私がそう言って彼の腕から抜け出そうとすれば
「まだダメ」
今度は真正面の状態で抱き締められ
朝から濃厚なキスをされた。
キスをされたまま自然な流れで
スーッと私の胸を辿る雫の手。
「ちょっ、ダメだってば」
私がその手を握り制止すれば
「何で服着てんの?」
と不服そうな表情をされた。
「…明け方寒かったから」
そう答えれば
「どうせ瑞樹の事だから
"まだ"恥ずかしかったんでしょ?
俺と裸で密着しながら寝るの」
"もう何回もシてんのに"
そう耳元で囁かれ思わずゾクッとした。
「…わ、分かってるなら
いちいち聞かなくていいでしょ!
いいから、早く退いてよ!」
思わず顔を赤くしてぐいぐいと胸を押せば
「瑞樹ってホントに可愛いね」
と、話が全然通じない雫は
私のスウエットをいとも簡単に脱がせていき…
「待って。だって昨日もあんなに、」
もう身体がダルい私は反論するが
「瑞樹は動かなくていいから」
と、一括された。
「しずく、」
首から胸に落とされるキス。
厭らしく撫でられる太ももに甘い息を漏らせば
「今週分、充電させてよ」
キスの合間、
雫は切なそうな声でそう口にした。
…そんな風に切ない声で言われると
私は強く拒否が出来ない。
それに、また次こうやって会えるのは
雫の予定が入らない限り
早くて来週だろう。
「…あんまり激しくしないでよ」
私がそう言えばにっこりと微笑んだ雫は
私の唇に角度を変えながら
何度も何度もキスを落とした。
幼い頃は
まさか雫とこんな関係になるなんて
思いもしなかったな…。
そんな思いを抱えながら
私も必死に雫のキスに応えた。
ー
雫の腕から解放されたのは
それから3時間が経った午前11時頃。
雫がシャワーを浴びている間
パンを焼いて目玉焼きを作り
テーブルに並べていれば
「いい匂い」
シャワーを浴び終わった雫が
後ろから私のお腹に手を回し抱き着いてきた。
「早く食べて行かないと。
今日は午後からTRAP の
大事な会議があるんでしょ?」
私がそう言えば
「あー、サボりたいなぁ。
瑞樹とずっとイチャイチャしてたい」
そう言いながらも私から離れ
椅子に座って食べ始めた。
「昨日の夕方から
ずっとイチャイチャしてたでしょ」
私が笑っていれば
「瑞樹が全然足りない。
ホントは毎日会ってシたい位なのに
また1週間も出来ないなんて地獄」
雫はため息を吐いていた。
「私は雫にとってするためだけの相手なの?」
少しからかい気味に聞けば
「違う。大好きな彼女だからずっと一緒にいたいし、くっついてたい。瑞樹は違うの?」
珍しく真面目な顔で逆に聞き返された。
「そりゃあ…寂しいけど、
毎日するのはちょっと…」
私がゴニョゴニョ答えれば
「瑞樹が可愛いすぎるのが悪いんだよ」
と真っ直ぐな瞳で返された。
「わ、分かったから!ほら、早くしないと!
約束の時間になるよ!」
甘い言葉に耐えきれず
早く早く!と急かす私に、雫は笑っていた。