なんだか甘い気持ちで眠っていたのに、猫の肉球で一気に現実に引き戻された。
「ねえ。そんなに寝たら、夜眠れなくなるよ」
 そう言っても、尚はなかなか目を覚まさない。
 仕方がないので、私だけでもハンモックを降りようとしたら、そっと腕を掴まれた。
「本当は、さっきから起きてた」
 いたずらっ子のように――実際にいたずらっ子そのものだが――笑って言う尚。
 呆れたふりで、私は立ち上がる。
「あのねぇ。いい大人がいつまでもアホなことばっかりしてたら、人に笑われるわよ?」
「孝子だって、何だかんだで乗ってくるじゃん」
 確かにそうではあるが。
「ミケ、やたら孝子の家に行きたがるんだよなぁ」
 ミケというのは、尚の飼い猫のことである。
「じゃあ、私がミケをもらおうか」
「あげません」
 猫の居る暮らしを思い浮かべ、それもいいかもしれないと思う今日此の頃。