「まぁまぁ、落ち着いてよ。プライベートに干渉しすぎると嫌われちゃうかもよ?本気で怒らせたら秘書の仕事もやめられちゃうかもしんないし。そういうのも考慮してから動かなきゃ」
苛つきを押し殺すように笑顔を造る。
僕の言葉に黙り込む2人。悩んでる悩んでる。
アリスちゃんを迎えに行きたいけど嫌われるのは嫌ーっていう葛藤中?
まぁ、精々悩んでくれてりゃ2日くらいすぐ経つか。
アリスちゃん達だって2日間ずっとあのホテルにいるってわけじゃないだろうし。
そんなことを考えながらも冷蔵庫からいちごミルクのパックを取り出し、暇潰しのためにテレビの電源を付ける。
『――…の指名手配犯は、昨夜首都で目撃されており――……』
画面には、今話題の指名手配犯の映像が映し出されていた。
あーヤダヤダ。こういうのがいるから僕らの仕事が増えるんだよ。
まぁここまで目撃されてりゃ警察の奴らだけでどうにかすると思うけど。
この時間帯はニュースばっかだから、新聞読むのが面倒な僕にとっては都合が良い。
いつどんな仕事が来てもいいように、世間の動きには付いていかなきゃならない。
そういう点では面倒臭ぇ仕事だなって思ったり。
……つーか、指名手配犯って言えば…
「ぶらりん、最近愛しの春ちゃんのこと探さなくなったよね」
彼女も指名手配されてたんだっけ。
ぶらりんの初恋の人。
いつも思うけどぶらりんに初恋って単語、死ぬほど似合わない。
ずっと他人に興味なかったくせに、あの人にだけは怖いくらいの執着を抱いてる。
「探していないというわけではありません」
…春ちゃんの話題だとすぐ反応するよね、ぶらりん。
「そ?でも、前みたいな必死さがなくなったっていうか…やっぱアリスちゃんの影響?」
「……」
「アリスちゃんもぶらりんのこと庇って撃たれたし?雰囲気が似てるうえ同じようなことされちゃ本当に春ちゃんなんじゃないかって錯覚しちゃうよね」
「……」
「アリスちゃんのこと、春ちゃんの身代わりにでもするつもり?まぁ、僕はそっちの方が楽でいいけど。これ以上死体探しに付き合わされたくもな――」
―――…刹那、首に冷たい感覚がした。
距離はあったはずなのに、ぶらりんの手が、一瞬のうちに僕の首を捉えている。
冷たい指先が、爪が、食い込む。
「口の利き方には気を付けてください」
冷たい瞳が僕を見下ろす。
あはっ…アハハハハハハハハハハハハハハ!!最っ高だね!!!!
あのぶらりんがこんな安い挑発に引っ掛かるなんてさぁ!!!
春ちゃんを死体って言われんのがそんな嫌なのかなぁ!?
あぁもう、たまんねぇ…!!
普段冷静なぶらりんを乱すのって、マジで萌える。
今にも声を上げて笑い出しそうになるのを何とか堪え、通常スマイルでぶらりんにこう返す。
「ごっめーん元々こういう口だからさぁ。つーかさ、何でそんな怒ってんの?春ちゃんを死体扱いされたくねーならいい加減教えりゃいいだけの話じゃねーの?――何で死んだ彼女が未だにしつこく指名手配されてんのか」
あれれ、ちょっと口悪くなっちゃったかも。
まぁ萌えすぎて情緒不安定ってことで許してよね。
それに今は、チャンスとも言えるんだから。
ぶらりんが感情的になっている今なら、聞き出せるかもしれない。
ずっとぶらりんが僕らに隠してきた、死人である春ちゃんが指名手配されている理由について。
トップであるえりりんと、司令官であるぶらりんしか知らない。
国に関わることらしいけど、何も教えられず春ちゃんを探すのを手伝う僕の身にもなってほしいなぁ。
隠されると知りたくなるっしょ?
彼女の死体に何かあるのかな?殺された瞬間は見たけど、死体がどうなったのかまでは知らないし。
大切な物が彼女の死体に隠されてるとか…。
でもそれだと余計謎なんだよねー死んでるってことを分かってて探すぶらりんが。
まぁ、僕だって生きてる彼女を目にした時はゾクッとした。
傷だらけで、今にも死にそうで。何かに怯えているようなのに、瞳には強い光を宿してて。
正直、ぶらりんが必死に探すだけの価値もあるとは思う。
でもぶらりんはあの時…彼女が自分を庇って死んだ時初めて、今まで見たこともないような表情をした。
――“死んでいる”彼女をたまらなく愛しそうな目で見ていた。
いっそ、ぶらりんにそういう性的嗜好があるって考えた方が納得がいくくらいだ。
それはそれで結構萌えるしね。
「違います」
僕の思考を遮るように発せられた声音。
一瞬、考えていることが見透かされたのかと思った。
でも、
「確かに春を死体扱いされるのも腹立たしいですが、それだけじゃない。」
どうやらそんなことではないらしい。
「俺が春とアリスを一緒にしていると思われているのが心外だと言っているんです」
あぁ、違うってそういうことね。
「俺は“春に似ているアリス”だけでなく“アリス”である彼女にも惹かれている」
へぇー。そうなんだ。
………
……は?
……おいおい、ちょっと待て。
「俺は春が好きです。でも、アリスを見ているとどうしようもなく可愛がりたくなる。彼女と関わる男に嫉妬してしまう」
ぶらりんの手が、僕の首から離れる。
んんん?…まさか、まさかだけどさ。
アリスちゃんのことも好きだって言ってんの?
言うだけ言って自分のデスクに戻るぶらりんと、動揺を隠しきれない僕。
……つまりあれ?今のぶらりんはアリスちゃんと春ちゃん、両方好きってこと?
「………ぶらりんってばプレイボーイ~」
ずっと手にしていたいちごミルクのパックにストローを差しながら、とりあえず茶化しておく。
だってどんな反応していいか分かんないし。
春ちゃんのことについてはあっさり躱されたし。
「プレイボーイ?まさか。俺は誠実に彼女と接しますよ」
……嘘を吐け、嘘を。
心の中で毒づきながらも、無言でいちごミルクを飲む。
あークソ、やっぱぶらりんはそう簡単に教えてくれないか。
まぁ、僕だってそこまで気になってるわけじゃないんだけどね。
春ちゃんのことは、僕の本来の目的とは全く関係ない。
ぶらりんが必死になってることだから、ちょーっと気になりはするけどさ。
でもまさかアリスちゃんにまで、ね…。
ふとアランの方を見ると、意外にも僕より平然としている姿があった。
……いや、違うか。
表に出さないだけで、内心凄ぇ動揺してたりすんのかも。
うーん…これはドロドロしてきそう?
やべぇ、ゾクゾクがとまんねー。
まぁ勝手にゴチャゴチャやっとけばいいよ。
僕は僕で進歩させてもらうからさ。
はは、大丈夫だって。
そんな呼ばなくても聞こえてるよ。
ちょっと楽しむだけだからいいじゃん。
――…お……ん……お兄…ちゃ…お兄ちゃん…
苛つきを押し殺すように笑顔を造る。
僕の言葉に黙り込む2人。悩んでる悩んでる。
アリスちゃんを迎えに行きたいけど嫌われるのは嫌ーっていう葛藤中?
まぁ、精々悩んでくれてりゃ2日くらいすぐ経つか。
アリスちゃん達だって2日間ずっとあのホテルにいるってわけじゃないだろうし。
そんなことを考えながらも冷蔵庫からいちごミルクのパックを取り出し、暇潰しのためにテレビの電源を付ける。
『――…の指名手配犯は、昨夜首都で目撃されており――……』
画面には、今話題の指名手配犯の映像が映し出されていた。
あーヤダヤダ。こういうのがいるから僕らの仕事が増えるんだよ。
まぁここまで目撃されてりゃ警察の奴らだけでどうにかすると思うけど。
この時間帯はニュースばっかだから、新聞読むのが面倒な僕にとっては都合が良い。
いつどんな仕事が来てもいいように、世間の動きには付いていかなきゃならない。
そういう点では面倒臭ぇ仕事だなって思ったり。
……つーか、指名手配犯って言えば…
「ぶらりん、最近愛しの春ちゃんのこと探さなくなったよね」
彼女も指名手配されてたんだっけ。
ぶらりんの初恋の人。
いつも思うけどぶらりんに初恋って単語、死ぬほど似合わない。
ずっと他人に興味なかったくせに、あの人にだけは怖いくらいの執着を抱いてる。
「探していないというわけではありません」
…春ちゃんの話題だとすぐ反応するよね、ぶらりん。
「そ?でも、前みたいな必死さがなくなったっていうか…やっぱアリスちゃんの影響?」
「……」
「アリスちゃんもぶらりんのこと庇って撃たれたし?雰囲気が似てるうえ同じようなことされちゃ本当に春ちゃんなんじゃないかって錯覚しちゃうよね」
「……」
「アリスちゃんのこと、春ちゃんの身代わりにでもするつもり?まぁ、僕はそっちの方が楽でいいけど。これ以上死体探しに付き合わされたくもな――」
―――…刹那、首に冷たい感覚がした。
距離はあったはずなのに、ぶらりんの手が、一瞬のうちに僕の首を捉えている。
冷たい指先が、爪が、食い込む。
「口の利き方には気を付けてください」
冷たい瞳が僕を見下ろす。
あはっ…アハハハハハハハハハハハハハハ!!最っ高だね!!!!
あのぶらりんがこんな安い挑発に引っ掛かるなんてさぁ!!!
春ちゃんを死体って言われんのがそんな嫌なのかなぁ!?
あぁもう、たまんねぇ…!!
普段冷静なぶらりんを乱すのって、マジで萌える。
今にも声を上げて笑い出しそうになるのを何とか堪え、通常スマイルでぶらりんにこう返す。
「ごっめーん元々こういう口だからさぁ。つーかさ、何でそんな怒ってんの?春ちゃんを死体扱いされたくねーならいい加減教えりゃいいだけの話じゃねーの?――何で死んだ彼女が未だにしつこく指名手配されてんのか」
あれれ、ちょっと口悪くなっちゃったかも。
まぁ萌えすぎて情緒不安定ってことで許してよね。
それに今は、チャンスとも言えるんだから。
ぶらりんが感情的になっている今なら、聞き出せるかもしれない。
ずっとぶらりんが僕らに隠してきた、死人である春ちゃんが指名手配されている理由について。
トップであるえりりんと、司令官であるぶらりんしか知らない。
国に関わることらしいけど、何も教えられず春ちゃんを探すのを手伝う僕の身にもなってほしいなぁ。
隠されると知りたくなるっしょ?
彼女の死体に何かあるのかな?殺された瞬間は見たけど、死体がどうなったのかまでは知らないし。
大切な物が彼女の死体に隠されてるとか…。
でもそれだと余計謎なんだよねー死んでるってことを分かってて探すぶらりんが。
まぁ、僕だって生きてる彼女を目にした時はゾクッとした。
傷だらけで、今にも死にそうで。何かに怯えているようなのに、瞳には強い光を宿してて。
正直、ぶらりんが必死に探すだけの価値もあるとは思う。
でもぶらりんはあの時…彼女が自分を庇って死んだ時初めて、今まで見たこともないような表情をした。
――“死んでいる”彼女をたまらなく愛しそうな目で見ていた。
いっそ、ぶらりんにそういう性的嗜好があるって考えた方が納得がいくくらいだ。
それはそれで結構萌えるしね。
「違います」
僕の思考を遮るように発せられた声音。
一瞬、考えていることが見透かされたのかと思った。
でも、
「確かに春を死体扱いされるのも腹立たしいですが、それだけじゃない。」
どうやらそんなことではないらしい。
「俺が春とアリスを一緒にしていると思われているのが心外だと言っているんです」
あぁ、違うってそういうことね。
「俺は“春に似ているアリス”だけでなく“アリス”である彼女にも惹かれている」
へぇー。そうなんだ。
………
……は?
……おいおい、ちょっと待て。
「俺は春が好きです。でも、アリスを見ているとどうしようもなく可愛がりたくなる。彼女と関わる男に嫉妬してしまう」
ぶらりんの手が、僕の首から離れる。
んんん?…まさか、まさかだけどさ。
アリスちゃんのことも好きだって言ってんの?
言うだけ言って自分のデスクに戻るぶらりんと、動揺を隠しきれない僕。
……つまりあれ?今のぶらりんはアリスちゃんと春ちゃん、両方好きってこと?
「………ぶらりんってばプレイボーイ~」
ずっと手にしていたいちごミルクのパックにストローを差しながら、とりあえず茶化しておく。
だってどんな反応していいか分かんないし。
春ちゃんのことについてはあっさり躱されたし。
「プレイボーイ?まさか。俺は誠実に彼女と接しますよ」
……嘘を吐け、嘘を。
心の中で毒づきながらも、無言でいちごミルクを飲む。
あークソ、やっぱぶらりんはそう簡単に教えてくれないか。
まぁ、僕だってそこまで気になってるわけじゃないんだけどね。
春ちゃんのことは、僕の本来の目的とは全く関係ない。
ぶらりんが必死になってることだから、ちょーっと気になりはするけどさ。
でもまさかアリスちゃんにまで、ね…。
ふとアランの方を見ると、意外にも僕より平然としている姿があった。
……いや、違うか。
表に出さないだけで、内心凄ぇ動揺してたりすんのかも。
うーん…これはドロドロしてきそう?
やべぇ、ゾクゾクがとまんねー。
まぁ勝手にゴチャゴチャやっとけばいいよ。
僕は僕で進歩させてもらうからさ。
はは、大丈夫だって。
そんな呼ばなくても聞こえてるよ。
ちょっと楽しむだけだからいいじゃん。
――…お……ん……お兄…ちゃ…お兄ちゃん…