髪はキャラメルブロンド色で癖毛をピンで留め、何が可笑しいのかニヤニヤ笑う口元には八重歯が見える。


衣服は縦ラインが強調された黒いカーディガン、それからチェック柄のシャツ。


えくぼもできていて顔面だけは可愛らしいはずなのに、雰囲気を踏まえればそんなこととても言えないような男。




「固まってるけどどうしたの?新しい秘書の人でしょ?あ、もしかしてこれ欲しい?」




『欲しい?』なんて言いながら男は自分が持っていたいちごミルクを私に差し出してくる。


どういう見方をすれば私が飲みかけのいちごミルクを欲しがっているように見えるのやら。




「いりませんが…」


「あぁ、ここではタメ口でいいよ。やたらと敬語使う人いるからもう十分」



あっさりと敬語を拒否され少しやりずらくなってしまう。


私は慣れていなくても敬語を使わないと、どうしても口調が偉そうになってしまうタイプなのだ。




「あぁ、名乗り遅れたけど僕はラスティって名前。17歳だから宜しくね」




男の周りだけは弛緩した空気が広がっているというのに、私の心は凍り付く。